「一浩と栄里子のあたしんち」 第76回「悪さする智歯(親知らず)」

前回「親知らずの抜歯に待った!!」を記しました。
内容は矯正歯科で動かすことで、智歯を立派な歯として使用することがあるという内容でした。
逆に今回は、痛くも痒くもない智歯をなぜ抜歯しなくてはいけないかについて紹介します。
大抵、上顎も下顎も智歯は隣の7番目の歯より頬側(外側)に萌出するので、ズレがあり、あまり7番に影響を与えることがないのです。
しかし、たまに7番の歯根を智歯が吸収して7番をダメにしてしまう事があります。しかし、ほとんど症状がないのでレントゲンを撮ったときに吸収している事がわかるだけです。さらに智歯周囲炎にならない限り自覚症状はまったくありませんので、患者さんが抜歯することになかなか納得できないのもわかります。
特に下顎において小臼歯非抜歯で矯正治療する場合、倒れている7番を起こすために空隙を確保する必要があり、7番の後方にある智歯を矯正治療前に抜歯する事が多々あります。
上顎智歯はあまり水面下で悪さをしないので早期に抜歯することはほぼないのですが、下顎は悪さする事が多いです。

図1は17歳女子で智歯が7番の歯根に食い込んでいます。この症例は小臼歯抜歯治療だったので、矯正後は7番も前方に移動し、智歯も抜歯しやすくなります。従って矯正後に両側智歯を抜歯しました。7番の歯根は少し吸収されていますが、放置すればもっと悪化したでしょう。(図2:図1の矯正後)

図3は私の中学高校の同級生の男性で、智歯の抜歯を逃げていたら7番がだめになり結局7番も智歯も抜歯するはめになりました。私は7番を抜歯して、智歯を矯正で動かして7番の代わりに使用することも提案しましたが、それも嫌。右下に大きな唾石もあるのですが、これを、とるのも嫌ということで放置。結局4年後に7番がダメになり
ました。

図4は当院の患者さんではないのですが、智歯が7番をダメにしています。
このように智歯、特に下顎智歯は水面下で悪さをする事が多々あります。

抜歯後の後遺症については、腫れや開口障害は必ずありますが、1週間程度で改善してきます。稀に有るのが下顎智歯は神経近くにいるので、抜歯時に神経を傷つけることがあります。その場合下唇に軽いしびれが残ることがあります。期間はかかりますが徐々には改善します。このような後遺症を出さないようにするには、きちんと口腔外科で抜歯することです。

また智歯の抜歯は18歳以下の場合、保険適応外になることがあるようです。ですが、そもそも自費診療の矯正のための抜歯は全て保険適応外です。

院長 福増一浩