「一浩と栄里子のあたしんち」 第75回「親知らずの抜歯に待った!」

 

今回は「親知らず」について記します。
一般的に親が子供の口の中を見ないようになってから出てくる歯なので「親知らず」というのかもしれませんが、学術的に「智歯」と書きます。英語ではWisdom Teeth(知恵の歯)といいます。
18~20歳ぐらいの知恵が出る時期に萌出するので、智歯というのでしょう。
智歯は前歯から勘定して8番目にあるので、「8番」とも言います。

現代人は古代人に比較して顎が小さくなっているので、ほとんどの現代人は智歯まで萌出する顎の余裕がありません。そのため歯科大での教育では「智歯=抜歯」とされている傾向にあります。
しかし矯正歯科の世界では智歯を使用することが多々あります。結論から申し上げますと「将来、矯正歯科治療を考えているなら、診断がでて治療方針、抜歯歯牙が決まるまで智歯の抜歯を待ってもらいたい」ということです。

そこで智歯を使用する例をいくつか紹介します。
1.大臼歯関係が強いⅡ級(上顎前突の関係)の場合、上顎小臼歯のみ抜歯で治療することが多々あります。これを「Ⅱ級仕上げ」と言います。矯正専門医に「Ⅱ級仕上げ」と言うと上顎のみの小臼歯抜歯を連想します。(図1)

 

2.大臼歯関係がⅡ級で上顎第1大臼歯(6番)の遠心移動をしたい時に7番を抜歯して代わりに智歯を使用する事があります。すでに7番が齲蝕で失活しているような場合は、なおさらこの方法をとります。(図2)

3.矯正歯科治療で小臼歯4本を抜歯して、あまり前歯の後退させない場合大臼歯が近心移動します。(最小固定症例)智歯の萌出余地ができて智歯が萌出した場合、智歯を排列することがあります。(図3)

 

以上のように智歯は一番奥にあり、磨きにくいので齲蝕や智歯周囲炎になりやすく、抜歯の適応になりますが、矯正治療でいい位置に移動させれば立派な歯牙として機能し保存可能になります。
「智歯=抜歯」の概念を「智歯≠抜歯」もあるという概念に変えてもらいたいです。
ですが親知らずを抜歯しなければならない場合もあります。これについてはまた次回書きます。
院長 福増一浩