歯ぎしりしていませんか?

衛生士の井上です。
最近、友人から『子供なんだけど歯ぎしりがすごいのよね。。。』と相談を受けたり、患者さんから『歯ぎしりをするのですが。。。』とお話を聞いたりすることが多くなりました。そこで、今回は歯ぎしりについて特集を組んでみました。
歯ぎしりとは、食べたり噛んだりしていないのに、上下の歯が接触している状態が続くことをいいます。歯科医学的にはブラキシズムと呼んでいます。起きている時に起こる場合、寝ている時に起こる場合、顎の運動の仕方などによる分類があります。

顎の動かし方による分類

ブラキシズム

  1. グラインディング→下顎を左右に動かしてこする動き
  2. タッピング → 下顎をカチカチと上下に動かす動き
  3. *大きな音で周囲の人の睡眠を妨げることもあります
    *歯がすり減ってしまったり、割れたりヒビが入る原因になることもある

  4. クレンチング
    • 噛み締め/食いしばり(顎を動かさず上下の歯を噛み締め続けていること)
    • 上下歯列接触癖(Tooth habit contact=TCH)

    *音はしないけれど、歯に大きな力が加わり歯にヒビが入ったり割れてしまう原因になることもある

時間帯による分類

睡眠時ブラキシズム・・・中枢性の問題/睡眠障害とも関連があると言われている

睡眠時ブラキシズムは、はっきりとした原因はわかっていません。
人の睡眠では、入眠時に眠りの浅いノンレム睡眠から始まりレム睡眠へ移行します。これが交互に出現し、この移り変わりの周期を1セットとして1晩に3〜4回繰り返されます。
レム睡眠中は筋肉の緊張が抑えられていて、基本的に体は動きませんが脳波は起きている時と似た状態になっています。意識はなく寝た状態ではあっても 脳は活発に働いているのです。 また、レム睡眠中は交感神経系活動が活発になり、血圧や呼吸数、呼吸リズム、心拍数などが不安定になります。 ノンレム睡眠時には、小さな覚醒反応が起きていて、そのあとにブラキシズムが起きていることから深い睡眠(レム睡眠)から浅い睡眠(ノンレム睡眠)へ移行する途中に起きる無意識下の覚醒がブラキシズムの発生と関係があるのではと考えられています。起きようとする力と寝ていようとする力がせめぎ合っているところで力のバランスが崩れ、起きようとする力が少し上回って歯ぎしりが起こっているのかもしれません。
また、この現象は大人だけでなく、子供でも見られます。
しかし、この睡眠周期の過程で交感神経の活動が優位になり、心拍数や脳の活動性が優位になったからと言って、必ずしもブラキシズムが起きるという説は成り立たないそうです。なので、このプロセスとは別に歯ぎしりを起こさせるスイッチが脳内に存在していて、それが押された場合に脳から信号が発せられ歯ぎしりが起こるのではないか?と考えられており、研究が進められているそうです。
さらに、歯ぎしりのスイッチが入りやすい人とそうでない人という違いもある様です。睡眠時の歯ぎしり・食いしばりのリスク因子が関係しているとも言われており、これからの研究が期待されています。

*ストレスや口呼吸も歯ぎしりがおきるリスク因子と言われています。
寝ている時に口を閉めていますか?いびきをかいていませんか?

ブラキシズムによるリスク

歯の摩耗、補綴物や矯正装置への影響/歯周組織への影響/ 筋肉への影響(顎関節症)/その他(胃腸障害、睡眠時無呼吸症候群、不眠症など)
以下の様な症状がある人は、ブラキシズムを行っている可能性があります。
これらの症状に早めに気づいて、歯を守るための力のコントロールが必要です。

お子さんの歯ぎしりについて

心配されている保護者の方も多いと思います。子供の歯ぎしりは意外と多く、睡眠中に顎を動かすことで狭まった気道を広げ呼吸しやすくすると言った良い面や、幼児期には神経ネットワークが急激に発達する時期でもあり、脳の発達と咀嚼機能の発達は関係するため、歯ぎしりと関連があるのではないかという研究もあります。痛みや不調を訴えている場合は受診が必要ですが、そうでなければお子さんの成長発達を見ながら様子をみても良いでしょう。
睡眠時の親との分離不安や生活環境の変化などから、心理的にストレスがかかり歯ぎしりが起こりやすくなった、というケースもあります。過度に心配する必要はありませんが、歯ぎしり食いしばりを指標の一つにしてお子さんの健康の目安にしてみましょう。

覚醒時ブラキシズム・・・様々な条件で身についた癖

覚醒時ブラキシズムは、日常生活動作と大きく関係しています。パソコン、スマートフォンによる動作、家事、勉強など顔が下を向くことで下顎が後ろに後退し、より噛み締めやすい顎の形を作り出します。
多くの場合は、「悪習癖」であり、集中や緊張が続く場面で噛み締め/食いしばることを脳が学習してしまっているために起きています。
これを改善するためには、認知行動療法と言って、物事の考え方、行動、捉え方に働きかけてストレスを軽減していく方法で改善していくことが勧められています。

認知行動療法の例

  1. 歯ぎしりをすると:歯並びが悪くなる/ 歯周病になる・・など意識すること
  2. 行動変容の実施:メモを貼っておく「歯をはなす」などと書いた紙をよく見るところに多数貼る
  3. 行動変容の強化:最終的に歯が接触したら条件反射で無意識に歯を離せるようになるとベスト!

進学や受験、就職、オーバーワーク、悩みや心配事などの生活環境の変化やストレスが、食いしばりのきっかけに なることもあります。これらの習慣が癖になり、覚醒時のブラキシズムにつながることがあります。日常生活動作での下を向く作業はやむを得ないところもあるので、その動作が終わった後に、顔を正面に戻したり背筋を伸ばしたり、リセットする習慣をつける様にしましょう。

1時間に1回は伸びをしましょう。食いしばりにより、咬筋や側頭筋など口腔周囲筋の緊張が続くと、顎の疲労感や痛み、頭痛、また歯並びにも影響します。
マッサージをして筋肉の緊張を緩めるとコリがほぐれ緊張が和らぎます。
入浴時など、全身の緊張が緩んでいる時に、右図の咬む時に使う筋肉をほぐすのもおすすめです。