矯正治療中の部活動やスポーツについて

矯正治療をこれから始めようと考えている方で、部活動との両立既にスポーツをしている場合、大丈夫でしょうか?とご相談いただくことがよくあります。
気になっている方も多いのではないでしょうか。今回、このテーマについての当院における考えや対応をまとめました。

矯正治療を受けている方はブラケットやワイヤーなどの固定式装置(取り外しのできない装置)を使用することがあります。
固定式装置の場合、慣れや歯の移動状況によっては口唇や頬の粘膜にスレなどの損傷が起きる場合があります。
また、外からの物理的な衝撃(ボールが当たるなど)があると口腔内の損傷が起きやすいです。そして、動的治療中の歯は不安定な状況にあることから大きな衝撃を受けた時、歯の脱臼なども起きやすくなります。
これらのことから矯正装置を装着している方が外傷発生頻度の高いコンタクトスポーツなどを行っている場合はマウスガードの装着が望ましいといえます。

矯正治療中のマウスガードの作製にあたって

矯正治療中はもちろん、治療を進めていくことを第一の目的としています。
しかし、マウスガードは歯列に密着させて使用するものなので、頻繁な使用は矯正治療での歯牙移動の妨げになります。
また、マウスガードの使用頻度が少なかったとしても、矯正治療で歯が移動すれば短期間のうちにマウスガードの適合が不良となるため頻繁な再制作が必要となってしまいます。
そのため当院の患者様がマウスガードの作製を希望された場合、下記のように対応させていただきます。

・ブラケットでの歯牙移動中は基本的に作製不可
・相談したうえで作製が必要な場合 →1週間など短期での一時的な使用が望ましい
・使用を継続する場合は矯正治療の定期検診時に毎回確認し不適合の状態に応じて再製作 (目安として1ヶ月に1回)

スポーツマウスガードを義務化しているスポーツ

マウスガードの着用がルールで義務付けられているのは、下記のスポーツです。
中学生や高校生では体がぶつかり合うコンタクトスポーツ以外にも、野球、バスケットボールなど球技での外傷も多くなっています。
野球を始めとして、バスケットボール、サッカー、テニスなどの球技スポーツでは、飛んできたボールがあたったり、相手の足でけられたり、またゴールポストや壁に激突したり、あるいは隣にいたプレーヤーが振り回したバットやラケットとぶつかったりして、歯や顎が折れたり、歯が脱臼(歯が抜ける)する事故がしばしば起こります。
ルールで義務化されていなくても 「自分の身体は自分で守る」が基本です。
安心してスポーツに参加できるように、思いっきりプレーを楽しめるように、マウスガードを装着することをお勧めします。

〈完全義務化〉
ボクシング キックボクシング アメリカン フットボール テコンドー ラクロス 総合格闘技

〈一部義務化〉
ラグビー(13~19 歳) アイスホッケー(U-20) フィールドホッケー(中学のみ) 空手(組手)

〈着用可〉
野球 ソフトボール バスケットボール サッカー ハンドボール バレーボール
テニス 陸上競技(投擲・跳躍) レスリング ウェイトリフティング 柔道

矯正治療中の部活動やスポーツをされる方とその保護者の方へ

マウスガードの装着が義務付けられているスポーツの部活動を考えている方は、今後の治療方針に変更や影響が出る場合がありますので、診断や治療開始前に矯正歯科医および担当衛生士とよく相談してください。
矯正治療の開始時期や使用する装置などを検討させていただきます。また、コンタクトスポーツ以外でも体を動かすような部活動を考えている方や、スポーツをされている成人の方も是非ご相談ください。
スポーツをされる方はマウスガードの装着を積極的に行ってください。しかしながら、成長期の子供の場合、外傷防止のためのマウスガードが成長期の顎の発育を妨げてしまったり、不適合から顎の位置のズレを生じてしまう場合があります。
このため、口腔内の状態に合わせてマウスガードの適合性や歯列変化等を確認するため定期的に検診をしていただくことをお勧めします。

既製品マウスガードについて

動的治療中のマウスガードの装着について、再製作が必要な事を説明しましたが、歯科医院で頻繁にオーダーメイドのマウスガード製作することは、患者様にとっても身体的、経済的負担になるかと思います。
そこで歯並びや矯正治療の状況によっては、既製品のマウスガードやその代用となる物をお勧めすることもあります。
矯正治療中の全ての患者にお勧めするわけではありませんので、部活動などで既製品のマウスガードを勧められた場合は、歯科医師とよく相談してください。

3