症例紹介:小臼歯抜歯治療後の後戻り症例

今回は、他の医院で上下顎の左右小臼歯の4本の抜歯治療を行なった方で、治療後のリテーナーの使用不足と、口腔習癖(口唇閉鎖不足、舌癖や噛みしめ癖)が原因で後戻りを起こし、空隙歯列(すきっ歯)となり、当医院で再治療を行なった患者様の症例を紹介します。

■患者
20代女性

■主訴
他医院で矯正治療を行なったが、前歯に隙間が出てきてしまい気になる

■当医院での治療内容
インビザラインを用いての治療・MFT機能訓練

■治療期間
2年

■費用
インビザライン 400000円+税(再治療料金として)
処置料 月々1000円から5000円+税×24回の来院

治療前前歯だけで無く抜歯部位にも隙間が認められる

治療後空隙が閉鎖し良好なかみ合わせを得ることができた

今回の症例は、歯牙移動量が少なく矯正治療が2度目であること,お仕事柄人前で話すことが多いということで、患者様と相談の上インビザラインでの治療を選択しました。

インビザラインとはマウスピース矯正の一種で、従来のブラケットやワイヤーを装着せずに、取り外し可能な目立たないマウスピースを、2週間ごとに少しずつ歯を移動したマウスピースに交換して歯を動かす方法です。

目立たない、話しやすい上に、来院回数が少なくすみます。そのほか装置の取り外しができ、ハミガキが容易なので、むし歯になりにくく衛生的、そして金属類を使用しないので金属アレルギーのある方でも治療可能です。
利点も多い装置ですが1日中(20時間以上)アライナーを装着しないと、計画通りに歯が動かないので、患者様にきちんと使用していただかないと治療が計画通り進みません。

*注意:全ての治療がマウスピース矯正で行えるわけではありません。
抜歯治療や重度の叢生、歯の移動量が大きい治療などはマウスピース矯正には向きません。

今回の患者様は後戻りでの再治療のため、後戻り予防に重点を置いた治療を行いました。
MFTなどの機能トレーニングを積極的に行い、毎日コツコツと続けてくださったので、口元の仕上がりも大変良い結果となりました。

歯科衛生士の赤田

治療後の歯並びの変化について(後戻りの予防のために)

矯正終了後、年月とともに歯並びが変化し、凸凹やすきっ歯になることがあります。
治療前の状態ほどには戻りませんが、これを「後戻り」と呼んでいます。
長い年月による変化は、加齢による歯の咬耗など止むを得ない変化もありますが、短期間で変化してしまった場合の原因の一つに、保定治療(治療後の歯や顎骨を安定させ、長期に歯並びを保持し、お口のバランスを整える治療)を歯並びの安定を確認しないまま、患者さんが途中で中断してしまうことがあります。(当院では保定後2年経過した頃に、歯列の安定性確認のため終了診断を行ない、今後の歯列の維持やお口の健康管理についてのアドバイスを行っています。)

また、そのほかの原因に、舌や口唇の癖があります。咬み合せが治っても、不正咬合の原因となっていた悪い口腔習癖を取り除けていなければ、歯並びはまた変化してしまいます。

不正咬合の原因となった習癖については、診断時にお話しするようにしていますが、習癖は話を聞いて理解すれば直るものではありません。

習癖の改善には、MFT:筋機能療法:舌・唇・顔面の筋肉を正しく機能させる為のプログラムと毎日のトレーニングが必要です。MFT:筋機能療法は、矯正治療の効率を上げ、治療後の良い状態をキープするために大変重要です。

ブラケットを外した時、患者様の喜んでいる様子を見ると自分の事のように嬉しいです。いつまでも良い状態でいられるように、保定装置も先生の指示を聞いて、しっかり使ってくださいね。

歯科衛生士の赤田