~子供の矯正治療について~子さんの矯正治療を検討中の保護者の方へ

技工士 勝田

こんにちは。技工士の勝田です。
今回の特集記事は皆さんにより良い矯正ライフを送っていただけるよう、歯科技工士という立場からではありますが、保護者の悩みにフォーカスしてみました。

このような悩みをお持ちではないですか?

  • どこの歯医者でも、矯正治療結果は一緒じゃないの?
  • 歯並びを治すのに、なぜいろいろな治療の仕方があるの?
  • この装置を使う意味がイマイチ分からない‥
  • なぜこんなに長い期間治療をしなければいけないの?

このような疑問や不安に加え、子供に矯正装置を使わせなければならないので、余計にモヤモヤとした感情を抱えてしまう方もいるかと思います。この特集が矯正治療について理解を深め、安心して治療を受けるきっかけになれたらうれしいです!

矯正治療の目的とは

ガタガタしている、隙間が開いているなど、見た目の悪さをただ綺麗に並べていくだけが矯正治療のゴールではありません。一見きれいな歯並びでも、上下の歯がきちんと咬み合っているとは限りません。大切なのは、咬み合わせと顎と口元のバランス。「歯並びをよくして、もっときれいになりたい」と、矯正歯科医院を訪れる人はたくさんいますが、「咬み合わせをよくしたい」という人は、まだ少数派です。

「きれいな歯並び」とはよく噛める、口元の機能の整った咬み合わせであること。それは、綺麗な歯並びと口元はもちろん、虫歯や歯周病の予防になり、顎の良好な成長発育を促します。そして、QOLの向上へと繋がります。

子供の矯正は顎顔面の成長誘導を行います!

子供に多いおちょぼ口。実は下顎の劣成長です。気づかないでいると成長とともに骨格のズレが大きくなるので、オトガイの緊張も強くなります。

オトガイの力こぶは歯並びが悪い証拠です!

どこで矯正治療をうける?

日本の法律では歯科医師の資格を持っていれば誰でも矯正の治療をしても構わない事になっており、虫歯や歯周病治療を行う一般歯科でも矯正の看板を掲げるところは数多くあります。そこで矯正治療を担当するのはどんな先生でしょうか?きちんと歯並びの検査を行っていますか?福増矯正歯科では他院で治療中の方の相談が近年増えてきています。治療がうまくいっていない方のほとんどが、「写真や歯型採りなどの検査をしたことがない」と答えています。

矯正治療は非常に治療期間を要する治療です。永久歯列の矯正でも平均2年、成長期の子供では10年もの間、経過を見ていくこともあります。長期の治療だからこそ始める前には治療ゴールへの予測が必要です。

矯正治療において最も重要なのは診断と治療計画です。治療開始前には写真やレントゲン、模型などの検査を行い、診断と治療予測を行います。定期的に資料を残しておくことで治療経過の比較ができますし、治療方針の見直しや患者さんの治療に対する理解と安心感が得られます。

子供の矯正:1期治療

乳歯列期、混合歯列期(永久歯と乳歯が混在している歯列)の時期に開始する治療のことを言います。1期治療とは成長を利用した治療で、永久歯が生えやすいようにスペースを広げたり、 顎の大きさやバランスを整える治療を行います。成長を利用する治療のため期間が長く、効果がわかりづらく感じる場合もあると思いますが、1期治療とはこの後に行う2期治療(大人の矯正、本格矯正を楽に行うためや、2期治療の期間を短くすることができる準備治療ともいえます。

子供の矯正治療で使用される装置の例

拡大床

永久歯が生えやすいように歯列や顎を拡大します。拡大ネジを回して徐々に拡大します。取り外しが可能なので、清掃性に優れていますが、効果は患者さんの使用状況に左右されます。

<中心に拡大ネジが入っています>

機能的矯正装置

下顎の位置を誘導し顎の成長を促し、上下顎の位置関係のバランスを整えます。口を閉じて使用する事で機能訓練になります。様々な形態の装置がありますが、取り外し可能な装置なので、効果は患者さんの使用状況に左右されます。

<バイオネーター>

<トレーナー>

<EOA>

顎外固定装置

ヘッドギア

上顎の成長抑制や大臼歯を奥に動かす装置です。上顎前突(出っ歯)に使用します。取り外しが可能です。

<ハイプルヘッドギア>

<サービカルヘッドギア>

フェイシャルマスク

上顎の成長を促します。上顎の成長不足による反対咬合(受け口)に使用します。取り外しが可能です。

顎外固定装置は口の中の固定式の装置と併用して使用します。

大人の矯正・2期治療

永久歯列期の全体的な治療(本格矯正)のことを言います。この時期の治療は一般的にマルチブラケット法といわれる方法で行われます。

永久歯列での治療方針は抜歯の有無と、外科手術の有無に分けられます。抜歯をせず、手術をせず、良好な噛み合わせになるよう治療したいと矯正歯科医は誰でも思っていますが、骨格的な不正や、歯を並べるスペースの確保が難しい場合には、抜歯や手術を併用しないと治療が不可能な場合もあります。

矯正治療において”歯を綺麗に並べること”のみが目的である場合には、多くの症例において非抜歯で行うことは可能かもしれません。しかし、実際には上下顎の健全な噛み合わせと、調和のとれた口元を提供し、長期の安定を目指す場合、抜歯が必要な場合は必ずあります。

2期治療から開始した場合、そのような確率が高くなりますが、1期治療から開始し、良好な骨格や歯列バランスを得ることで抜歯や外科手術を避けることができます。

最後に、、、

院長先生がよく口にする言葉で”Begin with the end in mind”『目的を持って始める』という言葉があります。まず、ゴールを思い描き、実行に移しましょう。矯正治療でも同じ事が言えますね。素敵な口元を目指し、目標に向かって治療に励む。その途中で不安や悩みを抱え、ゴールへの道が霞んでしまう事もあるかと思います。指針なき選択は海図を持たない航海のようなもの。今回のこの記事が皆さんにとって海図のような役割になれば幸いです。