「一浩と栄里子のあたしんち」第80回「後継者育成」

新春に長期休みをいただき院内改装を行ったのですが、色々と業者の不手際があり、GWにやり直し工事を行いました。

今から思えば打ち合わせ中にも何度か「これで大丈夫なのだろうか?」と思うところはあったのですが、依頼先は歯科業界の大手メーカーだったので、「他の歯科医院でもこんな感じですよ」と言われるとまあそれで問題ないのならイイのかと進めてしまい、結果トラブルが多発し、診療への支障も多々あったので、やり直し工事を行うことになりました。

再工事に際してはメーカ側の支店長も現場監督の監督責任の不手際を認め、事前打ち合わせから工事まで同席し、当院からも工事内容を吟味できる人材に同席してもらい、工事を担当する電気回線工事の業者と内装業者も前回とは変更してもらいました。

その上でのやり直し工事の結果ですが、電気回線の方は仕事のできる業者さんで問題なく仕上がりました。しかし、内装工事業者の方は技術力不足で何度も指導と手直しを行う羽目になりました。

やり直し工事を行って思うことは、社員教育と管理ができていないと大手メーカーといえども安心できないということでした。特に技術系の仕事はやり方は教わっても経験“智”を伝えるのが難しく、仕事のできるベテランがいなくなると、同じ結果が出せなくなることがあります。

矯正歯科医院も同様です。矯正歯科臨床の特殊性として
1.治療期間が長期になる。
2.治療期間が長いため矯正歯科医の教育期間も長くかかるので、歯科医師だれでもが学んでいる内容ではない。
3.自費診療で保険適応は顎変形症や先天性疾患などの症例のみ。

当院も1990年に開業して34年目に突入しており、おかげさまで患者さんも多く忙しい毎日をすごしております。しかし、人間だれでもいつかは引退する時がくるもので、その日に向けて矯正専門開業医は事前に数年、場合によっては数十年前から準備しています。

1つには、医院の閉鎖です。閉鎖するためには新規患者を取ることができません、しかし残った患者さんが終わるまでには数年かかってしまいます。緊急の場合にはそれら
の患者さんを他医院へ依頼することも考えなくてはいけません。そのため日本臨床矯正歯科医会では継続診療の料金規程が設定され患者さんへの返金用の保険にも入っています。

しかし、料金の問題が解決できても、矯正歯科には色々なテクニックがあり、どこでも矯正歯科に転医すれば同じ治療が受けられるとは限らないのです。よくあるのが一般歯科で矯正治療を受けていた患者さんが、非常勤の矯正歯科医が退職してしまい、当院に継続診療を求めて来院するケースです。往々にして治療内容や治療方針に問題があり、転院に困ることが多いです。

2つ目は診療室を継続する方法です。矯正専門開業医は何年もかけて後継者を育て、テクニックや考え方も継承して世代交代するケースが多いです。

福増矯正歯科は大丈夫か??と思われるかと思います。日頃からスタッフ教育に重点を置くのはもちろんですが、スタッフの質の差を少なくするために、システム化を皆で考えながら進めています。

また後継者についても、長女が歯科大学を卒業して現在、矯正科の大学院に通っています。まだまだ教育訓練が必要ですが、博士になって戻ってくることを願っております。

福増一浩 & 栄里子