ESTAに注意!

2009年以降に渡米経験のあるかたはご存知だと思いますが、ビサ無しで渡米するにはESTA: Electronic System for Travel Authorizationの登録が義務化となりました。これは2001年の同時多発テロ以降、テロリストの侵入を防ぐ目的で義務づけられました。一度登録すると2年間は有効で登録費は$14(約¥1,500円) です。渡米する48時間前には登録が必要ですので、私は学会参加のため毎年渡米しているので、2年に1回再登録している次第です。

今年の3月の南カルフォルニア支部Angle矯正歯科学会はハワイのカウアイ島で開かれる事になりました。これはカリフォルニアの先生がいつもロサンゼルス付近でやるのに飽きているせいで、2017年には東京でも行っています。

一昨年、私の症例がMost Difficult Case(もっとも困難な症例)で賞をとったので、ハワイでは口頭発表することになりました。私が流暢な英語で発表するのを見せて、家族にドヤ顔したい一心で、家族全員で行くことにしました。ハワイ旅行の1週間前の週末の夜、私のESTAはまだ1年あったのですが、家内と長男と長女のESTAの登録を一杯飲みながら行なっていました。数時間後に返答が来たのですが、長男だけが拒否されました。一気に酔いも冷めて調べてみると、全てNOにしておけばいいのに、問8の「あなたはこれまでに、米国政府が許可した滞在許可期間を超過して、米国に滞在したことがありますか?」を間違ってYESにクリックしていたのです。

長男に不法滞在歴はないので、すぐにアメリカ大使館に電話しました。大使館はビサの発行できるが1週間はかかる、ESTAは国土安全省の管轄なので大使館ではどうにもできないと言われました。Webで色々調べると「間 違って回答した場合の訂正は国土安全省Border Securityにワシントン時間の08:30-17:00に電話して・・・・・」と書いてあったので時間も調べず電話したら女性が出て、「ESTAの回答の変更はできない・・・・・」の一点張りでした。結構しつこく、くらいついたのですが、先方も電話を切るようなことはせずに、やさしく対応してくれました。英語での会話ですし、これ以上言っても並行線だと思い、一旦は電話を切りました。後でワシントン時間を調べると23時ごろで時間外のOperatorが対応していたと察し、変更できる権限のある人ではなかったようでした。

週明けに直接大使館に行って、事情を説明してなんとかしてもらおうと思い、長男には半休を取らせ、私は予定していた講習会を欠席し、2人で大使館に向かったのですが、大使館も非常に混雑しており7〜8時間待ちと言われてしまいました。もう無理だと思った私の落ち込みはひどく、旅行に行けなくなった長男もなんと声をかけていいか困っていました。

しかし、ハワイ旅行にあまり興味のなかった長男は、せっかくとった有給休暇を無駄にしないように、すぐに別の計画を立てていたようです。それはそれでいいのですが、私は航空券の払い戻しができないので、もったいないという気持ちで一杯でした。また、Webには「これからの質問に一つでも該当すると、ESTAでの渡航=ビザなしでのアメリカ渡航資格を永久に失うことになります。」とあり、外資系に勤務している長男がビサなし渡米の資格を永遠に失う事になってします。

もう一度ワシントンの運営時間内に電話して問い合わせようと思い、今度は私より英語のできるカリフォルニアの友人に事情を話し電話してもらう事にしました。ワシントン時間の08:30 はカリフォルニア時間、05:30、日本時間は23:30です。

夜中の0時近くになってカリフォルニアの友人から電話があり、「今から3時間以内にもう一度ESTAの申請をしてください、しかし申請料の$14はまたかかります。」と言われ、すぐに申請しました。$14ぐらい余計にかかっても航空券をドブにすてるよりましなので、申請すると申請はできました。後は許可を待つだけです。祈りながら待っていると、夜中の2時すぎにメールで許可されたと返答が来た時には、安堵で涙が出そうでした。

友人が入国審査で何か言われた時のために準備して置いたほうがいいと言うので、長男の過去のパスポートも持参し、今回の入国理由やESTAの再申請理由などを書いた英文の書類を作成し出発しました。しかし、入国審査は拍子抜けするぐらい簡単で、何事もなく無事に、家族4名、カウアイ島の学会に参加することができました。5月に全米矯正学会がロサンゼルスであったので、友人に会いお礼を言ったら、「Border Securityがこのような対応することは稀で、すごい事で、とってもLucky だった。」との事です。日頃の人間関係に感謝すると同時に、いい加減な状態で、大切な手続きをしてはいけないと反省した次第です。
院長 福増一浩