~舌小帯切除術と扁桃摘出術~
歯科医師の西田です。
患者さんの中には、診療室で「舌のすじを切りましょう」や「扁桃腺の手術をおすすめします」と言われてびっくりしたことがある方もいっらしゃると思います。
今回の特集では矯正治療に伴ってよくおすすめする舌のすじを切る手術(舌小帯切除術)と扁桃腺をとる手術(口蓋扁桃摘出術)についてお伝えし、手術に対して勇気を出してがんばって頂きたいなあと思っています。
舌小帯切除(伸展)術
『ぜつしょうたい』ってなーに???
舌の裏側にある下あごと舌をつなげているすじのことです。
このすじが短く舌の動きをじゃましている状態を”舌小帯強直症”といいます。
なぜやらないといけないの?
咀嚼・嚥下・発音障害、口腔内の自浄作用の低下などの機能障害の原因となります。
また、舌のポジションへの影響から機能訓練の妨げや下の前歯を外に押し出したり、隙間を作る原因となることがあります
見てみよう!自分の舌、どうなっているかな?
こういう場合は舌小帯強直症が疑われます。
- 舌の先を上の前歯の裏側につけた状態で口をあーんと開いた量が何もしないで口をあーんと開けた時の1/2以下
- あっかんべーした時に舌の先が下がる、また舌の先がくびれる
- 舌の先を上に上げた時に舌がハート型になる
- 小帯の引っ付いている位置が舌の先端に近い、下の前歯のすぐ後ろに引っ付いている。
手術を受ける年齢
正しい発音のために5~6歳までが理想ですが、麻酔等の処置に対する協力ができるようになってから行います。
術式
手術の前にトレーニングを行います!
切除前:舌の運動範囲を広げるレッスンを1~3ヶ月行います。
舌の挙上ができないときは舌を横に振ったり、歯を舌でなめるなど舌の先を動かす練習
切除後:瘢痕(傷跡が固まってしまうこと)の防止のため舌の運動促進レッスンを手術後1週間以内から開始します。
半年程で舌小帯は正常になります。
口蓋扁桃摘出術
『へんとうせん』てなーに???
扁桃は、昔は扁桃腺と呼ばれていましたが、本体はリンパ組織で、正しくは「腺」を除いて、扁桃と呼びます。
扁桃はばい菌やウイルスがのどの奥に入る前に免疫によって退治する門番の役割をします。
扁桃組織はたくさんありますが、最大のものが、のどちんこの左右に1個ずつある口蓋扁桃です。
大きく口を開くと見ることができます。
歯並びとの関係は?
口蓋扁桃が大きいと、舌が後ろに下げられないので、舌の位置が前にきてしましまいます。
皆さんも風邪で喉が痛い時など、飲み込みが辛い思いをしたことがあるかと思います。
扁桃肥大は常にそのような状態です。
それにより舌が前歯を押して噛み合わせを開いたり(開咬)や、下の前歯がでてきたり(下顎前突)の原因となります。
また、 正常な舌の位置は上あごの内側にあるのですが、 舌が常にだらんと下あごにさがってしまうこともあります。
そうすると上顎は内側からの支えをなくして狭くなってしまうのです(上顎の狭窄)。
とっても大丈夫?
口蓋扁桃は免疫を担当する臓器ですが、大人と同様に子供でも、免疫機能は扁桃摘出前後でほとんど差がないという報告が多くあります。
幼児期になると他の扁桃組織が十分発達しており、扁桃摘出を行っても代償されるからと考えられています。
耳鼻咽喉科で最も施行されている手術の1つです。
適応症状
適応年齢は、通常4~5歳以上ですが、睡眠時無呼吸症候群などの場合は、もっと低年齢でも摘出を行うことがあります。
主な適応症状は年3~4回以上の習慣性扁桃炎、扁桃病巣感染症 、病的扁桃肥大、慢性扁桃炎、がんなどです。
このうち矯正治療と関係が深いのが高度扁桃肥大です。
口蓋扁桃の大きさ、働きは、4歳位から7歳位までの時期に最高となり、徐々に小さくなります。
このような生理的範囲を逸脱した肥大を、病的扁桃肥大と呼びます。
歯並びに影響するだけでなく、このために呼吸障害や摂食障害などの症状がでることがあります。
呼吸障害は、気道が狭くなって睡眠時に無呼吸がおこったり、胸郭の発育が障害され、肺や心臓に異常をきたすこともあります。
摂食障害は、食事に時間がかかるため、精神身体的に成長障害をきたすことがあります。
術式
以前は局所麻酔で行われていましたが、現在は、全身麻酔で行う場合の方が多くなっています。
全身麻酔で行うと、手術中は意識も痛みもありません。
手術は口から行いますので、顔や首に傷が残ることもありません。
手術の合併症として多いのは術後出血です。
入院期間は施設によって異なりますが、通常は数日から10日ぐらいです。
参考文献 口腔筋機能療法Q&A
二つの顔を持つ臓器 扁桃とその病気
病気が治る鼻うがい健康法