矯正装置教室~口腔悪習癖の治療~

「また指しゃぶりしてる!」みなさんも言ったり言われたりした経験がありませんか? 口腔習癖には、指しゃぶり(吸指癖) の他にも咬爪癖・弄舌癖・咬唇癖・吸唇癖・歯ぎしりなどがあります。これらの口腔習癖には心理的な要因が関与している部分が多く、一概に局部的な除去措置を行えばよいというものではありません。通常は成長とともに自然に消失していきますが、永久歯の交換時期近くまで、この習癖が続くと歯並びに悪影響を及ぼしてしまいます。
そこで、今回は矯正歯科で用いられる口腔習癖の除去装置について紹介します。

指しゃぶり(吸指癖)除去装置

吸指癖で最も一般的なものは拇指(親指)吸引癖です。装置を使用しないでも、心理的な要因を除去することで治癒する場合や、指に苦いものを塗った
り、「ばんそうこう」をはったりするとやめてしまう子供もいます。しかし、このような措置でも治らない場合は、口腔内に除去装置を用いることがあり
ます。このような装置の中には、上顎の前歯部の裏側にワイヤーのフェンスを装着し、指をしゃぶった時に邪魔をする装置もあります。

~指しゃぶりによって開咬になってしまう~


舌癖除去装置

舌癖には弄舌癖(舌の突出、異常嚥下癖)や咬舌癖などがあります。このような舌癖による過剰な舌圧が長く続くと、上下顎の前歯部を唇側に傾斜させ、開咬を引き起こしたり、空隙歯列(すきっ歯)になる場合もあります。このような悪習癖を除去する際に使用する装置は、指しゃぶりの場合と同じような構成ですが、舌が突出しない形にワイヤーのフェンスがあります。口腔内に固定してしまうもの(固定式)や患者さん自身で取り外しのできるもの(可撤式)があります。

〜可撤式の装置を使用した例〜

可撤式の装置1
可撤式の装置2


トレーナーによる治療

きれいな歯並びに整えていくためには、口腔習癖を除去するとともに口腔機能を改善していく必要があります。例えば、異常な唇の動きや舌の位置が習慣的になっているなど、口腔機能に障害がある思われる場合は、歯科衛生士によるMFT(筋機能療法)指導や、トレーナーを使用して、口腔筋機能を強化していく必要があります。

トレーナーによる治療




1 舌先に刺激を与えることで舌の正しい位置調整をしま      す。

2 舌を前方に押し出す行為を抑制し、鼻腔呼吸を促進し      ます。

3 口唇を吸い込む癖や咬む癖を抑制します。

4 顎全体の位置調整をします。

このように、人によって口の中にもいろいろな癖があります。しかし、指しゃぶりやタオルなどをかじる癖というのは、乳幼児期であれば正常な発育段階の一つであるといえます。

3歳頃までは歯並びにほとんど影響はなく、自然になくなることが多いので心配しすぎる必要はありません。逆に、おしゃぶりなどを早く取り上げてしまうことは、口で呼吸をする習慣がついてしまい、その結果、鼻呼吸ではシャットアウトされるはずのウイルスなどから身を守る免疫系にとても大きなダメージを受けてしまうとも言われています。しかし、4〜5歳になっても、いつもポカンと口を開けていたり、指しゃぶりをしたり、鉛筆を咬んだり、上下の前歯で舌を咬むなどの口腔習癖が見られる場合は、いずれ歯並びに悪影響を与えてしまうので注意が必要です。そういった場合は無理にやめさせるのではなく、時期を見て徐々にやめられるようにしていきましょう。気になる事がありましたら、歯科医師に御相談ください。

(耳鼻科の病気が原因で口で呼吸をしている場合はそちらの治療も必要です。)