歯と顎の使い過ぎ!TCH(歯列接触癖)について

「Tooth Contacting Habit」歯牙接触癖について

「Tooth Contacting Habit」って何?

「Tooth Contacting Habit (TCH)」とは「 歯列接触癖」の略で、上下の歯を”持続的に” 接触させる癖のことをいいます。皆さんの中には通常、上下の歯が接触しているのが当たり前!と思っている方もいるかもしれませんが、実は違うのです!
また、上下の歯の接触と聞くと一般的には「かみ締め」や「食いしばり」「歯ぎしり」を思い浮かべる方が多いと思いますが、実際にはグッと強い力で、かみ締めや食いしばりを行わなくても、上下の歯が接触する程度でも筋の緊張・疲労は生じています。
今回は意外と自覚していないTCHについて特集してみました。

TCHがあるとどうなるの?

皆さんは上下の歯が接触しているのは1日どのくらいか知っていますか?
通常、何もしていない時は上下の歯は接触しておらず、離れており、会話や食事をする際に接触するだけで、接触している時間の合計は1日わずか17分程度が正常だと言われています。
普通の人は口を閉じていても、上下の歯の間には2~3mmの隙間があります。
これを安静位空隙と呼び、咀嚼筋(左図)は安静状態にあります。

咀嚼筋は安静状態でも筋肉の弱い活動電位があります。
上下の歯が接触すると、軽い接触でも咀嚼筋の活動が強まります。
そのため上下の歯の接触時間が長くなると、筋肉の緊張や疲労、顎関節への負担が増えてきます。
さらに筋肉疲労でこわばった顎は、就寝中にも無意識の「かみ締めや」「歯ぎしり」などの、より重篤な症状を起こすことがあり、起床時症状(顎の疲労感,歯の違和感,口が開きにくい)や、顎関節症、頭痛などTCHが様々な不定愁訴にも関わっている可能性が考えられています。

TCHはどんなときにしているの?

基本的には緊張している場面でTCHはおこります。

  • 一時的に生じる精神的緊張(精神的ストレス)
  • 習慣化した作業で集中するとき(パソコン)
  • 精密作業
  • 家事(そうじ・料理)
  • テレビ、コンピューターゲーム

このように日常のよくある行動の中でTCHは生じるのです。

TCHあるかどうかチェックするには

  • 舌の先端あるいは周縁部に歯の圧痕がある
  • 頬粘膜に咬合線がある
  • 唇と上下の歯を別々に動かすことが困難

例:唇を閉じて咬合する。この状態から上下の歯を離開すると、同時に唇も離開してしまう。
例:唇も上下の歯列も離開している状態から上下の歯を接触すると、同時に唇も閉じてしまう。

*このような症状がある場合はTCHの可能性があります。

TCHの口腔内の影響は?

  • 歯の慢性咬合痛
  • 歯周病の悪化
  • 充填物や補綴物の脱離
  • 歯冠破折
  • 慢性的な口内炎
  • 咬合の違和感
  • 舌や頬粘膜の誤咬
  • 舌痛症
  • 義歯性疼痛

矯正治療への影響

  • 咬み合わせが深くなる
  • 前歯の凸凹が出やすい
  • 矯正治療中に歯が動きにくい
  • ブラケット脱離の原因
  • 装置破折の原因
  • 歯根吸収の要因になる
  • 矯正時の痛みの増加

TCHをコントロール(是正)するにはどうしたらよい?

~触れたら離す、の習慣化だけで直る~

STEP 1:自分で歯が接触すると咀嚼筋が活動することを認識しましょう!(図1)

STEP 2:家や職場に「歯を話す」「力を抜く」などと書いたメモ(リマインダー)を多数貼る。(図2)

STEP 3:歯が接触すると離す癖を作る。気づくことにより、最終的には歯が接触すると条件反射で、無意識に離開させるようになる。

顎関節症もTCHのコントロールで治す

顎関節症とは①顎関節や咀嚼筋の疼痛、②関節雑音、③開口障害ないし顎運動異常の3大症候のうち、少なくとも1つ以上を有すると顎関節症と診断されます。しかし、口が空き(35mm以上)、痛みも「軽度」であれば治療の対象ではなく経過観察をするのが原則です。
               (日本補綴歯科学会 「顎関節症に関するガイドライン」より)

顎関節症で治療が必要になった場合には、顎関節部の負担を軽減するため、薬物療法、スプリント療法、外科療法、運動療法、理学療法、セルフコントロール、などを行います。
そこで今回の参考文献の著者である木野孔司先生は、顎関節症患者の中でも特にTCHのある患者に対して、TCHの是正訓練を行ったところ、長期間にわたって顎関節症の痛みに悩んでいた多くの人が、痛みの改善を得ることができたと書かれていました。

このように、過度な緊張やストレス、家事などさまさまな場面でTCHはおこるので、先ずはリマインダーを活用し、リラックスを意識する簡単なセルフコントロールがお勧めです!
また、適正な姿勢は円滑な咀嚼が行いやすくなるので、顎や首、口の周りの筋肉バランスをとりますが、猫背などの悪い姿勢は咀嚼筋などの顎や首、口の周りの筋肉ストレスを起こすので(図4)、日常生活での姿勢の改善も大切です!
セルフコントロールでも顎関節症、肩こり、首こりが軽減しない場合は・・・リラクゼーションサロン「Cheer」にご相談下さい。
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