矯正装置教室 ~下顎前突(受け口)~
矯正装置教室も第3回になりました。第1回目の「機能的装置について」では、出っ歯(上顎前突)の症例をもとに、その原因や治療で使用する矯正装置を挙げて説明していきましたので、今回は日本人に多くみられる下顎前突(受け口)について、皆さんの疑問に答えていきたいと思います
下顎前突(受け口)ってどんなもの?
下顎前突とは、下の歯が上の歯より前に出ている噛み合わせのことです。横からみると下の顎が前方に突き出ていることもあります。下顎前突を分類すると、歯の位置の異常によるもの、上下の顎の形や位置関係のズレによるもの、これらの複合要因によるものに分けられます。ただし下の顎の成長量や成長期間は上の顎の発育よりも大きいので、最初は歯の位置異常だけかもしれませんが成長とともに、骨のズレが起こりやすくなります。
下顎前突(受け口)の種類 〜歯と骨格の関係〜
どんな原因があるの?
いつごろ治療を開始したら良いの?
幼児から成人までいつからでも治療は可能ですが、治療結果には違いがでてきます。骨格の発育バランスを整える治療は成長期でないとできません。例えば、6 歳で矯正相談を受けて10 歳から治療開始することは可能ですが、16 歳からでは成長をコントロールする治療はできません。
近年矯正治療の進歩により歯を抜かなくても治療が可能になってきました。しかし、骨格のズレや歯が大きく顎の中に並べきらない場合には、歯を抜い
て骨格のズレを補正したり、顎の中に収まりきるように、歯を抜いて治さなければなりません。
また、歯を抜いても補正できないほど、骨格のズレが大きい場合には、手術を併用した外科矯正治療を行うこともあります。(外科矯正治療は顎変形症指定医院であれば、保険が適用されます。神奈川県では約30 件あり、当院も指定医院です)
どんな装置を使って治すの?
下顎前突(受け口)の場合には切歯斜面板やビムラー、フェイシャルマスクなどの矯正装置を使って、顎の骨の成長や歯の生える方向をコントロールして、理想の噛み合わせになるようにしていきます。ここでは、切歯斜面板を使用した例についてみていきましょう。
切歯斜面板はジャンピングプレートとも呼ばれていて、下の歯につける装置です。下顎前歯部に斜面がついており、上の前歯を前方に滑らせていきます。このことで、黒の→のように上の前歯が下の歯よりも前に出てきます。また咬む位置が変わるため、点線や二重線の⇒のように臼歯や顎の骨の成長方向をコントロールし、受け口を改善していきます。