タバコの害について
タバコは有害な嗜好物です。吸っている本人だけでなく、周囲の人たちにも害を及ぼします。そして全身の健康はもちろん、お口の健康にもたくさんの影響を与える のをご存知でしょうか。タバコの害について知ることで、禁煙はもちろん、子供たちが将来タバコを吸わないように、役立てたらと思います。
タバコは生活習慣病や死亡の危険因子です。
生活習慣病の原因や危険因子をみてみると、そのほとんどにタバコが関係しています。 タバコは様々なガンの死亡危険度を高めます。とくに食道ガン、喉頭ガン、口腔ガン、肺ガンの 死亡危険度はとても高くなります。
(生活習慣病…ガン、脳血管障害、動脈硬化、高血圧、糖尿病、歯周病などを指します。)
タバコは周りの人の健康にも影響を与えます
-他人のタバコの煙で、20人に1人が死亡します-
他人の吸っているタバコの煙を吸い込むことで、自分自身は喫煙していないのにその影響や被害を受けることを受動喫煙(関節喫煙)といいます。タバコの煙の中には少なくとも200種類以 上の有害物質が含まれています。それらの有害物質は、主流煙(喫煙者がフィルターを通して吸 うタバコの煙)よりも副流煙(タバコの火のついた部分から出る煙)に多く含まれるため、受動喫煙 が問題とされています。例えば…夫が喫煙していると、妻の受動喫煙による肺がんの危険性が高まります。両親からの受動喫煙により、子供の歯肉が黒ずみます。
タバコは産まれてくる赤ちゃんにも影響を与えます。
妊婦がタバコを吸うたびに、胎児は一瞬呼吸が止まり、窒息状態になります。そのため、死産、早産、自然流産、奇形児や低体重児などの出産危険率が高まります。1日 20 本以上喫煙する妊婦 では非喫煙者に比べ、自然流産の発生率は約2倍になるそうです。また妊娠中のタバコは子供の 身体発育、知能発達の遅延の原因となります。妊婦自身が吸わなくても、夫や家族が吸っていて 受動喫煙にさらされていれば、同じように危険性が増します。
タバコが胎児に与えるメカニズム
(1)ニコチンの血管収縮作用のため母体から胎児へ流れる血液量が少なくなり、したがって胎児に酸素と栄養が十分送られなくなる。
(2)タバコの煙に含まれる一酸化炭素が身体の中に入ると、血液中のヘモグロビンと結合してヘモグロビンが酸素を運ぶのを邪魔し、血液を低酸素状態にする。したがって、胎児も低酸素状態になってします。
男女では病気の罹病性や症状に差があり、 とくに薬物の代謝機能が大きく異なります。 思春期の喫煙による肺の成長阻害は女性のみ にあらわれます。またニコチンに対する依存 性は女性のほうが強い傾向にあります。 赤ちゃんの健全な健康を考えるならば、妊娠 を機会に家族全体の禁煙が切に臨まれます。
タバコは骨粗鬆症を促進します。
女性はタバコを吸えば吸うほど、骨粗鬆症にかかりやすくなります。そして、喫煙は骨吸収を促進 します。そのため口の中では、歯槽骨の吸収と喪失が早まり歯周病の進行も促進されます
骨粗鬆症とは・・?
骨の量が著しく減少して骨がスカスカになり、容易に骨折する状態をいいます。高齢になってからの骨折は寝たきりにつながります。骨粗鬆症の予防には、いかに若年時に豊富にカルシウムを摂取し、骨量のピークを高め、低下の速度を緩めるということが重要となります。
タバコは歯周病の最大の危険因子です。
-タバコを吸っていると歯周病がより早く進行します-
タバコに含まれるニコチンは血管を収縮させる作用があるため、歯肉が炎症を起こしても出血が 抑えられてしまい、気づかないうちに症状が進行してしまいます。そのため歯周病治療をせっかく行っても、喫煙が継続していると治療の効果が台無しになってしまいます。 またニコチンは免疫機能を低下させ、歯周病への抵抗力も下げるため、間接的に歯周病を悪化さ せてしまいます。そして、喫煙によって歯周病の進行が早まると、歯の喪失もより早まります。
タバコを吸うヒトの口のなか
タバコを吸うと、口腔内や顔貌に様々な変化が起こります。口腔内では 唾液分泌が抑制され、唾液が少なくなるので口臭が発生し、味覚・嗅覚が損なわれます。 口の中が乾燥しやすくなり、虫歯も出来やすくなります。そのほか、歯の着色はもちろん歯肉も どす黒く変色したり、舌に黄色の舌苔がびっしりと付着するようになります。 顔貌は喫煙により血流が悪くなるので肌の色つやが悪くなり、シワやシミが増え、老化が進みま す。タバコを1本吸うとビタミンCが 25 mgも失われるため、肌あれが起こります。
最後に・・・
ここ数年成人の患者さんが増え、喫煙者の口腔内を見る機会が多くなりました。同年齢の人と 比較し、明らかに喫煙者の方が、お口の健康状態が悪化している人が多く認められます。そしてほとんどの 人が、そのことを自覚していません。虫歯や歯周病で失ってしまった歯や歯槽骨は、元に戻すことは出来ま せん。そして、健康状態の悪化は少しづつ進むので、自分で気付いた時にはかなり進行しています。そうな らないためにも、定期健診を受けて欲しいと思います。そして、全身や口の中の健康を思うなら、またずっ と美しくありたいと思うなら、少なくともタバコは吸わないでいて欲しいと思います。