矯正治療について ~大人編~

仕事や家庭との両立が心配だったり、ずっと放っておいたのに今さら治るの?と思ったり・・・本当は歯ならびのことが気になっていても、「治療したい!」と言い出せない方は、意外と大勢いらっしゃるのでは ないでしょうか?今回はオトナならではの、矯正治療の特徴について、できるだけわかりやすく説明していきたいと思います。

《子供の治療とどこが違うの?》

矯正治療は大きく2つのステージに分けることができます。

1期治療(部分治療) :大人の歯が生えそろうまでの時期に行う
身長の伸びがピークをすぎるころまで行う
成長発育を利用した骨格成長コントロールが治療の中心
2期治療(本格治療) :大人の歯が生えそろってから行う
アゴの形に合わせた歯の移動が治療の中心
アゴのずれが大きい場合は外科手術を併用した治療を行う場合がある

子供の時期に1期治療では、狭いアゴを大きく広げたり、アゴの成長を促したりすることができます。ところが成長が止まった成人では、アゴの形も完成済み。すでに位置決めされたアゴの中で、歯のみを移動させて治療を行います。アゴのずれが大きく歯の移動だけでは治療に限界がある場合は、外科手術も併用します。

オトナの矯正は限界がある?いいえ!だからこそ、うまくいくこともたくさんあります。

その理由は・・・ ☆子供の矯正に比べ、好きな時期に短期集中的に治療ができる
(成長発育や歯が生え変わりなどを、待つ必要がない)
自分の意志で治療を始める方が多く、スムーズな治療が行われやすい
(親に連れられてきただけの子供は、通院や装置使用をさぼったりすることも)

《審美歯科とどこが違うの?》

差し歯

審美歯科とは、見た目の美しさに焦点を当てた歯科医療のことです。たとえば歯が出ているのを治したいとき、歯を削り神経を取って差し歯にし、見た目の歯の角度を変えるというような治療を行います。差し歯で見た目だけを治すと矯正治療で歯を動かすよりも短期間に、装置などを装着することなく治療できます。



しかし角度を大きく変えると歯の寿命が短くなったり、人工物のためやり直しが必要になる場合や歯ぐきの変色をまねく場合があります。矯正歯科は自分の 歯をゆっくり着実に動かす治療のため、咬み合わせ全体を治すことができます。その結果、口元を美しくバランス良く改善できると同時に、しっかりと咬める 状態をつくることによって、食べやすくなったり正しく発音しやすくなったり、むし歯や歯周病の予防になったりするのです。

《かぶせた歯があったり、歯が何本か抜けていても治療はできる?》

むし歯で神経を抜いていたり、差し歯やブリッジや入れ歯が入っていたり ・・・オトナの歯 にはいろんな「歴史」があります。痛んで長くもちそうもない歯や、歯の無い部分がある場合、それらの条件をうまく加味して治療できるよう考慮します。ただし悪い歯ならびに合わ せてつくられた人工の歯は、歯ならびが改善すると合わなくなり矯正治療後やり直しが必要 になる場合があります。

《大人の抜歯矯正、矯正用インプラント、外科矯正治療》

患者さんも矯正医も「できるだけ歯を抜かずに治したい」という考えは同じ。しかしアゴの成長が期待できないオトナの矯正治療では、歯を抜くことが重要な手段のひとつとなります。無理をして抜かずに矯正治療を行うと、治療後の歯の安定が悪くなったり、唇が閉じにくくなったりします。



歯を抜いて前歯をたくさん後ろに下げる治療をする場合、奥歯を固定する装置が必要ですが、オトナであれば矯正用インプラントを固定源として使うことができます。インプラントは患者さんの協力を必要とせず、比較的短期間で治療を終えることができます。このインプラント矯正は、アゴの成長が終わった方でないと行うことができません。



また歯の移動だけでは満足な治療結果が得られない場合、外科手術を併用した矯正治療を行います。手術後に咬みあうよう矯正治療を行ってから、口腔外科でアゴの骨を切る手術を行い、手術後ふたたび矯正治療で咬み合わせを整えます。手術には全身麻酔と入院が必要です。顔に傷は残りません。矯正治療の費用は、認定を受けている当院では健康保険が適用されますし、手術も保険適応です。外科矯正治療も、アゴの成長が終わった方でないと行うことができません。

治療経過

《仕事、転勤、結婚、出産 ・・・ オトナの事情》

あいさつにキスやハグをするのが日常的な欧米では、歯の矯正は当たり前。管理職で太っていたり歯ならびが悪いと、自己管理ができていないとみなされたりします。日本では矯正をしている人が増えたとはいえ、社会人の場合矯正装置の見た目が気になるところ。なるべく目立たない装置を希望される方には、プラスチックでできた透明な装置をお奨めしています。



また、矯正治療は一度始めたら必ず最後までおこなっていただきたいものですが、転勤・転居などで通院で きなくなった時には、海外を含めた転居先近くの信頼できる矯正専門医を紹介しています。その際には治療の 進行状況によって料金を精算し、今までの資料を引き継ぎの先生にお渡ししています。



矯正治療中に結婚や出産を経験される方も、たくさんいらっしゃいます。通院をしばらくお休みしたい場合は、前もって言っていただければ何の問題もありません。

《健康で長生きするために ・・・》

矯正治療は何歳になってもできます。当院でも子供といっしょに治療を始めるお母さんは何人もいらっしゃいますし、50才を越えて治療を始める患者さんも何人もいらっしゃいます。悪い歯ならびは年齢を重ねるにつれて少しずつ崩れてゆく傾向があります。だんだんと前歯にでこぼこや、すき間ができてきたり、咬み合わせが深くなって出っ歯になってきたと感じる方は多いはず。いかがですか?ご自身の歯ならびは変わってきていませんか?


最近の調査結果では、8020達成者(80歳で20本以上歯がある人)は歯ならびの良い人が多く、反対に受け口の人や開咬(前歯が咬みあわない)などの歯並びの悪い人は、ほとんどみられなかったという報告があります。健康で長生きするためにも、歯ならびって大切なんですね!オトナの矯正、治療した場合としなかった場合、気持ちの負担も含め、メリット・デメリットをよく吟味してみてください。