「噛みしめ」によって起こる悪影響

習慣、ストレスなどで起きる噛みしめは、過度になると歯や身体に悪影響を与えることがあります!

噛み締め

現代はストレス社会、大人も子供も様々なストレスにさらされています。そんな時、口はどんな反応をするかご存知ですか。無意識のうちに口元をひき
しめて、歯を食いしばっていると思います。噛む事は良い事なのですが、何事もやり過ぎは禁物。今回はそんな噛みしめすぎの皆さんのためのお話です。

「噛みしめ過ぎると何が悪いの?」

噛み締め

《歯周病の原因になる》噛みしめや歯ぎしり癖は歯を強い力で揺さぶります。歯が揺さぶられると、歯を支えている歯槽骨が圧迫されて吸収を起こします。そのため歯槽骨が薄くなり炎症があると歯槽骨退縮や歯肉の退縮などの歯周病が起こります。歯並びの悪い人はかみ合わせの干渉がある事が多く、歯周病も起きやすいので注意が必要です。

《知覚過敏やむし歯の原因になる》歯肉退縮が起きると歯根が露出してきます。歯が長くなったと言う方がいますが、歯肉が下がって歯根が見えてきているわけです。歯根は歯冠部と違って歯質も薄く弱いので知覚過敏やむし歯を起しやすく、さらに歯ぎしりにより揺さぶられた歯の歯頚部は、ひび割れを起し、歯磨きのやり方が悪いと削れて楔状欠損を起していくので、ますます知覚過敏やむし歯になりやすくなります。

《歯が早くすり減る》永久歯は生涯使う歯です。徐々にすり減るのは自然な事ですが、噛みしめや歯ぎしり癖があると歯のすり減りが早く、平らな歯になってしまいます。平らな歯は噛む位置が不安定になりやすく顎のズレを生じやすくなります。

《歯列不正の原因になる》》噛みしめ癖があると奥歯の歯槽骨の発育を抑制するので、奥歯の高さが低くなり、前歯のかみ合わせが深くなったり、前歯の唇側傾斜が強くなったりします。成長期には顎顔面の骨格の形成にも影響があります。また、矯正治療を行う場合は歯が動きにくくなります。

《顎関節症の原因になる》》常に噛みしめていると顎顔面や首、肩などの筋肉が疲労し痛みを感じる場合があります。また奥歯の低下や噛みしめにより顎関節円板が圧迫され口が開きにくくなったり、口の開閉時に関節に音や痛みを感じる場合があります。

「なぜこんなことがおきるの?」

安静時の口は軽く唇を閉じた状態で上下の歯は触れ合わず、1〜2 mm の空間が開いているのが正常です。舌は先端が軽く上顎前歯の後ろの歯肉に触れているのが通常の状態です。そして、人の最大咬合力は通常自分の体重ぐらいですが、食事の時などに強く咬む事があるぐらいで、普段は噛みしめ続けてはいません。矯正治療で歯を動かす力は数十g 程度です。でも夜間の歯ぎしりなど無意識に噛みしめる力は数十Kg にもなります。そんな強い力で四六時中噛みしめていたら前述のような歯や顎に対する障害がでるのは当然でしょう。

「そして障害がでるのはお口の中ばかりではありません」

噛み締め

おなかの中にガスがたまって気持ち悪い。肩が凝る。目の奥が痛む・・・一見、無関係に思える複数の症状が、緊張やストレスで歯を噛みしめることが原因で起こることがあるそうです。あなたにも思い当たる症状はありませんか?実は、噛みしめると舌が上あごにくっつき、その反射でだ液と空気を飲み込むことになります。1回に飲み込まれる空気の量は2〜3cc で、1日50cc くらいまでは正常範囲とされます。しかし、いつも噛みしめ動作をしていると、胃や腸にたまる空気が200〜300cc にも達するケースがあるそうです。

その結果として、通常以上のげっぷや胃のあたりの不快な膨満感、頻繁な排ガス、左上腹部の痛みなどが起こります。噛みしめ動作による緊張は首や肩にも波及し、肩こり、側頭部などの頭痛、あごや目の痛みももたらします。時には食道の異物感や食欲不振、胸部の痛みが起こることも。東京医科歯科大頭頸部心療科の小野繁教授はこうした多様な症状をまとめて、「噛みしめ呑気(どんき)症候群」と名づけました。複数の症状を訴え、いくつもの病院や診療科を訪ねたのに、異常なしと言われた人が多いのに気づいたのがきっかけだそうです。患者さんの中には、消化器を胃カメラや大腸ファイバーで調べたり、頭部をMRIで調べるなど検査を繰り返した人も多いというので驚きます。

「噛みしめ過ぎの治療について」

噛む事自体は自然な事ですが、上記のような症状が出ている方は将来の健康のためにも注意が必要です。まずは症状に対する理解とリラクゼーションを心がけて下さい。パソコン作業などうつむき加減の姿勢の時に起きやすいので時々ストレッチなどをするのも良いでしょう。夜間の噛みしめや歯ぎしりなど意識的な改善が難しい場合は歯科医院でマウスガードを作製する事をお奨めします。

いかがでしたか?いくつか思い当たる節があった人もいると思います。年齢を問わず患者さんにも意外と多い癖なのですが、癖を自覚している人は少ないようです。なぜかというと物を噛んでいるわけではないので、噛みしめていると言う実感が無いんですね。でも、「上下の奥歯がいつも接していませんか?」と聞くと、癖のある人は「それが普通だと思っていました。」と答える方が多いんです。実は私も噛みしめ癖があり、以前から疲れた時やストレスのある時に頻繁なげっぷや左上腹部の痛みに悩まされていました。学生時代に矯正治療した歯並びも徐々に変化し、上顎前歯にはすきま、下顎前歯にはデコボコが出てきていました。歯並びの方はインビザラインで再治療を行い改善しましたが、噛みしめ癖や噛みしめ呑気症候群には、気長に着き合っていくつもりです。皆さんも何か気になる事がありましたら気軽にご相談ください。